地球買いモノ白書[5刷]

どこからどこへ研究会 編
A5判/104ページ/本体1300円+税
2003年8月/ISBN 978-4906640669

カップ麺、缶コーヒー、携帯、マグロ……身近な商品は、どこで作られ、どうやって私たちの食卓や生活にやってくるのか。環境や人びとにどんな影響を与えているのか。そして、私たちには何ができるのか。総合学習、夏休みのレポート、中学校から大学までのテキストに最適。

<この本で取り上げた商品>
チキン、マグロ、缶コーヒー、カップ麺、マガジン、ケータイ、スポーツシューズ、ダイヤモンドの指輪、マンション

目次

まえがき

第1部 9つのモノ語り
 第1部を読む前に
 チキン 至れり尽くせりの加工品
 マグロ 回転寿司の王様
 カップ麺 世界中から食材を集めて
 缶コーヒー 農民の汗と悲哀
 マガジン それは原生林からやってきた
 スポーツシューズ 世界的ブランドの現実
 ケータイ 使い捨てのハイテク
 ダイヤモンドの指輪 「永遠の輝き」の裏に
 マンション 山で生まれ、処分場へ

第2部 モノ語りから見えてきたこと
 日本はたくさんのモノを輸入して
   国内にためこんでいる
 日本が輸入している一次産品は
   多くの地域から調達されている
 子どもがつくったモノを
   わたしたちは買っている
 わたしたちの買っているモノが
   環境を破壊している
 新しいライフスタイルって?
   ──わたしたちにできること
 インターネットを活用しよう
   ──市民のための情報アクセスガイド

あとがき

書評

書評オープン


 日本の家庭にあふれる価格の安い輸入品。それらはどうやって生産されているのだろうか。そんな疑問を抱いたNPOのメンバーや主婦ら13人が「どこからどこへ研究会」をつくり、モノの由来を調べて、この本にまとめた。
焼き鳥のチキン、回転ずしのマグロ、カップめんのエビ、缶コーヒー、携帯電話など九つのモノを取り上げている。それらがいかに安い労働力で成り立ち、いかに途上国の環境破壊につながっているかを数字やイラストなどで分かりやすく解説。焼き鳥用の鶏肉を加工するタイの工場では10代の女性たちが朝から晩まで安い賃金で鶏肉をくしに刺し続ける。安ければ、それでよいのかと問いかける。

『毎日新聞』(2003年8月22日より)


 中国やタイの安い労働力にたよる鶏肉加工業、マグロの乱獲、世界各地の食材を荒らすカップ麺、コロンビアやメキシコでのコーヒー収穫までの農薬被害、パルプ・製紙産業による年間六十万トンの廃棄物、中国女性の長時間手づくり作業によるスポーツシューズ。ほかに使い捨てケータイや、ダイヤの指輪、マンションの問題を図解や解説・コラムで明らかにし、消費者としての大事な姿勢を問う。

『東京新聞』『中日新聞』(2003年9月21日より)


 大人の自由研究─―そんな形容がびったりの1冊。実際に、著者の「どこからどこへ研究会」は、膨大に消費されるモノの背景を探ろうと集まった、学生、会社員など「素人」のグループだ。
マグロ、缶コーヒー、携帯電話、ダイヤ……無作為に選ばれた9つのモノがどこで生まれ、どのような工程を経て消費者の手に届き、どう廃棄されるのか、図を使って丹念に追っている。日本が、いかに世界中からモノを大量に集めているか……。マグロやエビは世界中から集めて食べ尽くす勢いだ。しかも、モノの販売価格を安くするために、現地の労働者は過酷な条件下で働き、自然環境は破壊され続けている。
各国で歓迎されているとは思えない日本人の消費行動─―なんとかしなくては。本書には参考資料一覧やインターネット活用術が紹介されている。それをもとに、モノがどこから来るか、一人ひとりが自由研究をはじめてみるのは、どうだろう?

『クーヨン』(2003年11月号より)


◎回転寿司のマグロはなぜ安くなった?──私たちが買ったモノが環境を破壊する
<ソトコト的生きる哲学21世紀サバイバル>
(中略)まず真実を知ることから始めようという姿勢に拍手。これを読めば、世界を見る視点がきっと変わるはず。かなりオススメの1冊です。

『ソトコト』(2003年11月号より)


 私たちが日ごろ口にし、使っている物の原材料は、どのように調達されているのか。本書は徹底的に追求する。
カップめんのかやくのエビ一キロを捕る度に、一緒に網に掛かったイワシ五キロが捨てられる。弁当に入っている鶏肉はタイなどの工場で加工されており、従業員の日給は四百円程度。雑誌のカラーページに使用される紙は、オーストラリアや米国の原生林を伐採して作られる──。日本の物質的な豊かさの背景を知ることができる一冊だ。

『山梨日々新聞』(2003年10月26日、共同通信配信より)


 約二〇年前、魚の切り身が海で泳いでいる、こんにゃくが樹になっているという絵を子どもが描いている調査結果が報道され、話題になったことがある。いまもこんな絵を子どもは描くかもしれない。ここ数年、いくつかのNGO(非政府組織)で、消費者を対象としたグループインタビュー調査に参加して感じるのは、製品が消費者の手に届く前のイメージがわかない消費者が多いということ。製品の一生の影響を定量的に把握するライフサイクル・アセスメントの研究が企業で盛んに行われているのだ。非常に対照的だ。
本書は、チキン、マグロ、カップ麺、缶コーヒー、マガジン、スポーツシューズ、ケータイ、ダイヤモンドの指輪、マンションというモノの一生(原料採掘段階から廃棄まで)を追いかけてまとめた調査レポート。
若干、食べ物に偏っているが、各種統計・文献をおさえ、生産現場や廃棄現場などに足を運んで関係者から聞き取った成果を紹介している。
調査手法としては非常にオーソドックスだが、調査メンバーのほとんどは社会調査の専門家ではない。結果、生活者としての目線から、非常に平易な日本語、具体的にイメージしやすい数字などでの比較、イラストなどを使って、大上段にふりかぶらずに伝えることにも成功している。また、他のモノでこのような調査をしたい場合のノウハウも公開。その気になればインターネットのご時世、意外と情報は身近にあるのだ。結果もプロセスも学べる、国際理解教育、環境教育、消費者教育の非常に良い素材だ。
実際、調べてみると、モノの雄弁さが実感できるし、調べるプロセスは謎を解いていくようで非常に刺激的。はっきりいってハマります。「もったいない」という言葉はもう死語になっているのかもしれないが、モノを大事に使いこむ大切さや、モノで世界とつながっている事実を語りついでいってほしい。

『週刊金曜日』(2003年12月19日号より)


このほか、『季刊 軍縮地球市民』(No.1創刊号、05年6月1日)、『讀賣新聞』(03年9月24日)、『朝日新聞』(04年5月13日)、『月刊丸の内』(03年10月号)、『ダ・ヴィンチ』(03年12月号)でも紹介されました。