食農同源──腐蝕する食と農への処方箋[2刷]

足立恭一郎(前・農林水産省政策研究所) 著
四六判/280ページ/本体2200円+税
2003年8月/ISBN 978-4906640690
第2515回 日本図書館協会選定図書

日本には、世界の農林水産物貿易の10%が流入してくる。その裏には、深く進行する食と農の腐蝕がある。消費が歪めば、生産も歪む。では、どうすればよいのか。安全で環境を守る生産者を生かすも殺すも消費者次第。直接支払い制度や食農教育、そして食べ方と買い方の見直しによって、日本の食と農をよみがえらせる道を明示する。

目次

第1章 日本人の胃袋倍数
第2章 「隣人」と共生する食べ方
第3章 安い牛乳、高い牛乳
第4章 野菜の硝酸汚染
第5章 日本の「食」と「農」を守る道

著者プロフィール

足立恭一郎(あだち・きょういちろう)
1945年、奈良県生まれ。京都大学大学院農学研究課博士課程修了。現在、農林水産省農林水産政策研究所に勤務。2002年4月より地域資源研究室長。農学博士。専門は農業経済学。有機農業、食の安全、韓国の農政改革などに関する論文多数。

書評

書評オープン


●ポイントは
日本の農産物の多くは、人件費などの生産コストの高さから、価格では輸入品に太刀打ちできない。その中で、日本の食料自給率を向上させるには、有機農業を根付かせる取り組みが書かせない、と著者は主張する。
韓国は、無農薬などの基準を満たす農家に補助金を支払う制度を導入している。そうした例を挙げながら、著者は有機農業の育成策を提言する。一方で、価格の安さだけではなく、安全や安心、環境への負荷軽減という価値も評価する消費者を育てるには、小中学生の段階から食と農の教育を進める重要性も説く。

●著者の一言
消費者が、環境への負荷の軽い農業の大切さを突き詰めて考えるようになれば、栽培の実態が見えない海外から運ばれてくる農産物ではなく、国産の有機農産物を選ぶようになるはずだ。(農林水産政策研究所地域資源研究室長)

『読売新聞』(2003年10月6日より)


 世界中からの膨大な食料輸入、大量の食べ残し、BSE(牛海綿状脳症)の発生、野菜の硝酸汚染など、危機にひんする日本の食と農について考察し、豊かさを取り戻すための方策を提言する書。
農水省農林水産政策研究所の研究者である筆者は、資料を丹念にひもときながら現状を分析する。漫然と仕事をする行政への追及は厳しい。だが、現状には、買い物という投票行動をする国民にも責任があると筆者は言う。だからこそ、外観や価格にとらわれすぎた商品選択や価値基準を見直し、環境への負担を軽減する農業へ支持を、と呼びかける。
50年代、政府がパンやめん類を推奨し、栄養指導車を巡回させ、日本人の食生活が大きく変わった経緯を逆説的に評価し、本気で取り組めば短い時間で行動を変えることは可能だと説くくだりがユニーク。

『朝日新聞』(2003年10月15日より)


 巨大な日本人の胃袋が世界の農地から食料を奪うようにして輸入している実態などたくさんのデータと精緻な分析で示されている。そして消費者は農家や漁家を豊かにしない食べ方を選択してきた-食の洋風化、外部化、簡便化、加工食品の多用、ハレの食事の日常化等-が結果的に農水産業を衰退させたとし、消費者は無意識の加担者だと指摘する。

『食べもの文化』(2004年1月号より)


※そのほか、『ふぇみん』(03年9月15日)、『農業共済新聞』(03年10月8日号)、『主婦連たより』(03年10月15日)、『土と健康』(03年12月)、『自然と人間』(04年1月号)、『農林水産図書資料月報』(04年1月)、『畜産コンサルタント』(中央畜産会、04年2月)、『文化連情報』(04年2月)、『月刊ふるさとネットワーク』(04年10月)、『農林業問題研究』(第157号、05年3月)、『日本農業新聞』(08年3月31日)でも紹介されました。