有機農業の技術と考え方[3刷]

中島紀一・金子美登・西村和雄編著
A5判/302ページ/本体2500円+税
2010年7月/ISBN 978-4861870583

有機農業推進法が成立したいま、資材を多投入せず自然と共生する有機農業が21世紀をリードする
基本理念・基礎技術・栽培の技を研究者から実践家まで第一線の執筆陣によってわかりやすく解説した日本で初めての総合テキスト

普及指導員・農政担当者・生産者・研究者・
新たに有機農業を志す人たちの必読書!

目次

はじめに

第Ⅰ部 第Ⅱ世紀の有機農業
■現場からの提言■
 【1】小利大安の世界を地域に広げる  ……  金子美登
【2】有機農業のロマンと力  ……  星 寛治
【3】種採りが生み出す世界  ……  岩崎政利
【4】農の面白さとアジアに広がる合鴨農法  ……  古野隆雄
【5】農業が面白い職業と知らない人はかわいそう!  ……  本田廣一
【6】農は食べ物・健康の源  ……  須永隆夫
【7】カネにならない世界を大切にする
―「消極的な価値」で支えられている人生―   ……  宇根 豊

第Ⅱ部 有機農業の基本理念と技術論の骨格  ……  中島紀一
1 日本の有機農業は第Ⅱ世紀へ
2 食と農と環境をめぐる新しい時代状況
3 身土不二と食料自給、そして有機農業
4 自然と離反する近代農業、自然との共生を求める有機農業
5 有機農業技術の骨格―低投入・内部循環の技術形成―
6 有機農業技術展開の基本原則
7 有機農業推進の視点から見た有機JAS制度の問題点

第Ⅲ部 有機農業の基礎技術
第1章 健康な作物を育てる―植物栽培の原理―  ……  明峯哲夫
1 植物が生きる世界
2 植物栽培の永続性
3 植物の生の原理
4 低投入型の栽培を
5 小さな庭から

第2章 健康な家畜を育てる―日本型畜産の原理―  ……  岸田芳朗
1 戦後の日本が選択した加工型畜産の光と影
2 農と食を取り巻く世界の動き
3 畜産関係者と生活者が再生させる日本型畜産
4 日本型畜産の再構築

第3章 健康な土をつくる―有機農業における土と肥料の考え方―  ……  藤田正雄
1 有機農業の土は何が違うのか
2 土の生成、変化、発展
3 有機質肥料の特徴と使い方
4 作物にとって肥料とは何か
5 作物が健康に育つ環境―土づくりの基本―
6 いのち育む農

第4章 有機農業の育種論―作物の一生と向き合う―  ……  中川原敏雄
1 種採りのすすめ
2 種採りから野菜の本性を知る
3 生命力の強い種を育てる

第Ⅳ部 有機農業の栽培技術
第1章 作物・野菜栽培の考え方

【1】 畑地利用の基礎  ……  明峯哲夫
【2】 “雑草”“病害虫”とどうつきあうか ……  明峯哲夫
【3】 雑草・病害虫対策の実際  ……  根本 久

第2章 作物
【1】 イネ  ……  稲葉光國
【2】 ムギ  ……  石綿 薫
【3】 ダイズ  ……石綿 薫

第3章 野菜
【1】 有機農業と野菜栽培  ……明峯哲夫
1 人のつごう
2 土のつごう
3 野菜のつごう
【2】果菜類  ……  金子美登
・トマト・ナス・ピーマン・キュウリ・カボチャ
【3】根菜類
・ニンジン・ダイコン・ジャガイモ・サトイモ
【4】葉菜類  ……  金子美登
・キャベエツ・ホウレンソウ・コマツナ・レタス
【5】鱗茎類  ……  金子美登
・ネギ・タマネギ

●有機農業を理解するためのブックガイド  ……  谷口吉光

あとがき
<資料>有機農業技術会議の紹介
さくいん

△西村和雄の辛口直言コラム▽
 ・水田の除草・液体資材とは何なのだ・有機農業って何?・土の軽重と野菜・隔年結果の是正
・リンの過剰蓄積が起きた理由・リンの過剰による影響・アブラナ科はぜいたく好き・トマトの適期はいつ?
・オクラの栽培と調理の工夫・トウモロコシは追い播きを・臭くない堆肥をつくるには?
・よい堆肥は臭くない・落花生を多収するコツ・南北畝と東西畝・発酵は匂いでわかる

編著者プロフィール

中島紀一(なかじま・きいち)
1947年生。茨城大学農学部教授。有機農業技術会議副代表理事。主著『食べものと農業はおカネだけでは測れない』(コモンズ、2004年)、『いのちと農の論理―地域に広がる有機農業―』(編著、コモンズ、2006年)』。

金子 美登(かねこ・よしのり)
1948年生。有機農家、全国有機農業推進協議会理事長。主著『絵とき金子さんちの有機農業家庭菜園』(家の光協会、2003年)、『有機・無農薬でできるはじめての家庭菜園』(成美堂出版、2008年)。

西村 和雄(にしむら・かずお)
1945年生。百姓、前京都大学講師、有機農業技術会議代表理事。主著『スローでたのしい有機農業コツの科学』(七つ森書館、2004年)、『おいしいほんもの野菜を見分けるコツ百科』(七つ森書館、2009年)。

星 寛治(ほし・かんじ)
1935年生。有機農家、農民詩人。主著『「耕す教育」の時代―大地と心を耕す人びと―』(清流出版、2006年)、『詩集 種をまく人』(世識書房、2009年)。

岩崎 政利(いわさき・まさとし)
1950年生。有機農家。主著『岩崎さんちの種子採り家庭菜園』(家の光協会、2004年)、『つくる、たべる、昔野菜』(共著、新潮社、2007年)。

古野 隆雄(ふるの・たかお)
1950年生。有機農家。主著『合鴨ばんざい』(農山漁村文化協会、1992年)、『無限に拡がるアイガモ水稲同時作』(農山漁村文化協会、1997年)。

本田 廣一(ほんだ・ひろかず)
1947年生。興農ファーム代表、有機農業技術会議副代表理事。共著『有機農業ハンドブック―土づくりから食べ方まで―』(農山漁村文化協会、1999年)、『有機農業研究年報vol.6いのち育む有機農業』(コモンズ、2006年)。

須永 隆夫(すなが・たかお)
1946年生。新潟医療生活協同組合木戸クリニック所長。編著『リハビリに生かす操体法―入院中から在宅ケアまで―』(農山漁村文化協会、2005年)。

宇根 豊(うね・ゆたか)
1950年生。百姓、元農と自然の研究所代表。主著『天地有情の農学』(コモンズ、2007年)、『風景は百姓仕事がつくる』(築地書館、2010年)。

明峯 哲夫(あけみね・てつお)
1946年生。農業生物学研究室主宰、有機農業技術会議理事。主著『ぼく達は、なぜ街で耕すか』(風涛社、1990年)、『都市の再生と農の力』(学陽書房、1993年)。

岸田 芳朗(きしだ・よしろう)
1953年生。岡山大学大学院自然科学科准教授、有機農業技術会議理事。主著『地方からの地産地消宣言―岡山から農と食の未来を考える』(吉備人出版、2002年)、『生産者と消費者が育む有機農業』(筑波書房、2003年)。

藤田 正雄(ふじた・まさお)
1954年生。自然農法国際研究開発センター特別研究員。有機農業技術会議理事・事務局長。共著『土壌の事典』(朝倉書店、1993年)、『土壌動物学への招待―採集からデータ解析まで―』(東海大学出版会、2007年)。

中川原 敏雄(なかがわら・としお)
1949年生。自然農法国際研究開発センター研究部育種課長。共著『自家採種入門―生命力の強いタネを育てる―』(農山漁村文化協会、2009年)。

根本 久(ねもと・ひさし)
1950年生。埼玉県農林総合研究センター水田農業研究所長。主著『天敵利用で農薬半減―作物別防除の実際―』(編著、農山漁村文化協会、2003年)。『ひと目でわかる野菜の病害虫防除』(家の光協会、2009年)。

稲葉 光國(いなば・みつくに)
1944年生。民間稲作研究所理事長、有機農業技術会議副代表理事。主著『太茎・大穂のイネつくり―ポストV字型稲作の理論と実際―』(農山漁村文化協会、1993年)、『あなたにもできる無農薬・有機のイネつくり―多様な水田生物を活かした抑草法と安定多収のポイント―』(農山漁村文化協会、2007年)。

石綿 薫(いしわた・かおる)
1971年生。自然農法国際研究開発センター研究部生態系制御チーム長。共著『自家採種入門―生命力の強いタネを育てる―』(農山漁村文化協会、2009年)。

谷口 吉光(たにぐち・よしみつ)
1956年生。秋田県立大学生物資源科学部教授。共著『戦後日本の食料・農業・農村第9巻農業と環境』(農林統計協会、2005年)、主論文「有機農業の社会的発展と生協産直」『農業と経済』2009年4月臨時増刊号。

書評

書評オープン


有機農業に関する書籍はこれまで、理念だけ、技術だけのいずれかだった。著書は、理念と技術を総合的にまとめた「総合テキスト」。執筆は中島紀一茨城大学教授、金子美登全国有機農業推進協理事長、西村和雄有機農業技術会議代表理事ら17名。
全部で300ページ。はじめの3分の1は理論を述べる。本論となる部分は、基礎技術(Ⅲ部)、栽培技術(Ⅳ部)の2本柱でつくる。
基礎技術は①作物を育てる②家畜を育てる③土をつくる④有機農業の育種論――の4つがテーマ。栽培技術は「畑地利用」「雑草・病害虫対策」のほか、稲、麦、大豆、野菜ごとに栽培の技を説明する。
有機農業の定義として西村氏は「自然を効率よく効果的に利用して食料を生産し、合わせて自然資源の再生産を工夫する農業」と説明。さらに「有機農業を行うには、注意深い観察力、何が起こっているかを見抜く洞察力、さらに次に何をなし得るかを決定する決断力が必要」と述べる。
有機農業を実践する場合、経験と技が必要になるが、農家にとっては十分参考になる一冊だ。

(『日本農業新聞』10年7月26日より)


有機農業に長く取り組んできた専門家が解説した本。土づくり、栽培の基礎、作物別のノウハウなどの説明のほか、話題は地域づくりや食べ方にまで及ぶ。有機農業は単なる農業技術にとどまらず、社会のあり方や人の暮らし方をとらえ直す営みであることを示している。巻末にはさらに知りたい人のためのブックガイドも。食べ物や農業のあり方に関心がある人に

(『朝日新聞』10年9月16日より)


『日本農業新聞』(10年7月26日、8月3日、9月6日)、『ガバナンス』(10年9月号、No.113)、『朝日新聞』(10年9月16日)、『公明新聞』(10年9月20日)、『食べもの文化』【10年12月号、No.425で紹介されました。