タブー――パキスタンの買春街で生きる女性たち

フォージア・サイード著
太田まさこ監訳
小野道子・小出拓己・小林花訳

A5判/376ページ/本体3900円+税
2010年10月/ISBN 978-4861870743

南アジアにかつて存在したコーテザン(王侯貴族に仕える高級娼婦)制度が、現代の買春へと変容していく過程について、パキスタンの買春街を8年間にわたって調査した大作。買春街の人びとの暮らしの描写をとおして一般社会に潜む矛盾を暴きだす。

※原題 『TABOO!――The Hidden Culture of Red Light Area』

目次

日本の読者の皆様へ

第1章 タブーとされる地区
ラホールの買春街/ シャーヒー地区の昼と夜/ 「赤線地帯」の女性博士

第2章 「赤線地帯」の人びと
最初の出会い/作戦の変更/踊り子ライラ-/断ち切れない水と油の関係/客引きの親分

第3章 踊り子たちの暮らし
大みそかの騒動/三人の踊り子たち/パンミーの家族/稽古場にて/芸能修行/映画スタジオ

第4章 売春という仕事
もつれた関係/ライラーの父親/ライラーの実の母親/シャーヒー地区の男性たち/
コーターとコーティー・ハーナー

第5章 売春婦と結婚
ライラーの結婚/結婚をしない選択/打ち砕かれた夢/シャーヒー地区への引っ越し計画

第6章 売春婦たちの人生
下級娼婦たち/パンミー一家の出来事/夜通しのパーティー/許されない恋愛/
記憶をたどって/ナーイカへの道/生活のための唯一の選択

第7章 売買春が存在する理由
手がかりを探して/本当の理由

訳者あとがき
用語解説

 

著者・訳者プロフィール

フォージア・サイード
ミネソタ大学(社会学博士)。パキスタン国立民俗伝統遺産研究所、国連開発計画(UNDP)パキスタン事務所、アクションエイド・パキスタン事務所などを経て、現在、NGOメヘルガル代表、ジェンダーと開発分野の国際コンサルタント。1991年に性的暴行や暴力による被害を受けた女性のための救援センターをパキスタンで初めて設立するなど,社会活動家として知られている。共著Women in Folk Theatre[大衆演劇に於ける女性]。

<訳者紹介>
太田まさこ(おおた・まさこ)
ウェールズ大学スワンジー校(経済学修士)、イースト・アングリア大学(開発学博士)。サセックス大学(IDS)研究助手を経て、国際協力機構(JICA)専門家としてパキスタンに赴任。現在、(財)アジア女性交流・研究フォーラム主任研究員。

小野 道子(おの・みちこ)
イースト・アングリア大学(開発学修士)、フリボーグ大学(子どもの権利修士)。JICAでバングラデシュ、ウガンダ、パキスタンに赴任。ユニセフ南アジア地域事務所(ネパール)を経て、現在ユニセフパキスタン事務所勤務。

小出 拓己(こいで・たくみ)
東京外国語大学大学院修士(ウルドゥー語学・文学)。ロンドン大学(『社会人類学修士)。(財)ユネスコ・アジア文化センター勤務を経て、JICA専門家(識字・教育行政)としてパキスタンやアフガニスタンに勤務。

小林 花(こばやし・はな)
サセックス大学(ジェンダーと開発修士)。JICA、国連食糧農業機関(FAO)などでネパール、パキスタン、モロッコ、タイ、アフガニスタンに赴任。現在、東京大学大学院総合文化研究家国際科学専攻に在学するとともに、アイ・シー・ネット(株)コンサルタント。

 

書評

 

書評オープン


踊り子、その家族音楽家などとの会話や事件を交えた物語風の構成。最終章では、著者、著者の従妹、踊り子が「タブー」を議論する。一般社会とシャーヒー地区で売買春にかかわる女性を「硬貨の表と裏」と表現し、パキスタン社会のからくりを鋭く分析してみせる。欧米の大学では文化人類学の教材としても使用されている

『ふぇみん』(2010年12月15日)


『ふぇみん』(10年12月15日号、No.2943)、『社会新報』(11年2月2日号)、『Cutting-Edge』(11年2月28日号、第40・41合併号)、『月刊We learn(ウィラーン)』(11年4月号、Vol..696)で紹介されました。