マスター。ウイスキーください――日本列島バーの旅

文・写真:吉村喜彦
四六判/224ページ/本体1700円+税
2011年4月/ISBN 978-4861870798

ウイスキーは人間味
あの街の、あのマスターに会いにいこう
きっと、やさしい時間が待っている

この地球上で、人間しか酒を飲む生きものはいない。ほんとは人間の心が酒を飲んでいる。
だからこそ、マスターの人間性が酒に映り込むのである。
マスターの話にはその土地のにおいがあり、空のいろがあり、水のかげ、風のそよぎがある。
「あのマスターに会うために、あのバーで、あのウイスキーを飲みたい」
そういう夢のような旅に出ようと思った。(「はじめに」より)

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数多ある類書とは異なり、新たな境地を拓くエッセイ
カタログでもなく、蘊蓄でもなく、思いこみでもない
11人のマスターが語る「ウイスキー的」おとなの生き方

 

目次


はじめに …… バーの旅に出よう

●ウイスキー銀河鉄道の夜 ――  大阪「十三トリスバー」
●一浴一杯、また一杯   ――  松山「バー露口」
●花鳥風月、ウイスキー  ――  東京「絵里香」
●オホーツク流氷ロック  ――  網走「バー・ジアス」
●石垣・風まかせ  ――  石垣島「エレファントカフェ」
●雨の大阪アイリッシュ  ――  大阪「ザ・テンプルバー」
●スタンド・バイ・ミー  ――  大阪「堂島サンボア」
●そして、神戸ハイボール ――  神戸「サヴォイ北野坂」
●人生、ゴキゲンで行こう ――  仙台「モンド・ボンゴ」
●光の酒には,骨がある  ――  仙台「ル・バール・カワゴエ」
●ウイスキーは寂しい  ――  東京「バー武蔵」

あとがき …… ウイスキーが教えてくれた

 

編著者プロフィール

吉村 喜彦(よしむら・のぶひこ)
1954年大阪生まれ。京都大学教育学部卒業。サントリー宣伝部勤務を経て作家に。著書に、小説『ビア・ボーイ』(新潮社、PHP文芸文庫)、『こぼん』(ともに新潮社)、ノンフィクションでは『漁師になろうよ』『リキュール&スピリッツ通』(ともに小学館)『食べる,飲む、聞く 沖縄 美味の島』(光文社新書)、『オキナワ海人日和』(創英社/三省堂書店)、『ヤポネシアちゃんぷるー』(アスペクト)など多数。
また小社の『ウチナーパワー――沖縄 回帰と再生』(2010年7月)にも執筆いただいてます。

 

書評

 

書評オープン


もう、ウイスキーが復権する時は来ないのではないか。そんなふうに思ったことさえあった。コンパの席の水割りは酎ハイに代わり、グラスの琥珀を見つめるダンディーは紫煙とともに姿を消した……と思っていたら、昨今のハイボール・ブームである。ウイスキーはものの見事によみがえった。
長く続いたウイスキー受難の時代を、ひたすらウイスキーを愛し抜くことで過ごした11人のマスターの物語である。再生のドラマの真の主人公はマスターたちかもしれない。
大阪・十三駅の「十三トリスバー」はトリスのハイボールを「Tハイ」と呼ぶ。創業54年の老舗のマスターは2代目だ。すじ肉こんにゃく炒めや三田牛のステーキサンドとTハイ。地元に根を下ろしたウイスキーの姿がある。愛媛・松山の「バー露口」は東京タワーが建った年に創業した。いまも電気冷蔵庫は使わず、大きな氷で冷やす「3丁目の夕日」の冷蔵庫が健在で、学生時代の大江健三郎さんも訪れたという。四国の洋酒文化はここから始まる。
著者はサントリー宣伝部を辞めて作家に転進した。グラスを変えてもウイスキーへの愛情は変えなかった56歳、読むうちに一緒に飲みたくなってくる。

『毎日新聞』(2011年4月29日)


『毎日新聞』(都内版・11年4月29日)、『東京スポーツ』(11年5月9日)、『夕刊フジ』(11年5月20日)、『北海道新聞』(11年5月22日)、『日刊ゲンダイ』(11年5月27日)、『週刊新潮』(11年6月2日号)、『サンデー毎日』(11年6月5日)、『食楽』(11年7月号)、『プレジデント』(11年7月4日号)、『あまから手帖』(11年7月号)、『男の隠れ家』(11年8月号)、『danchu』(11年7月号)、『琉球新報』(11年7月10日)、『東京新聞』(11年7月10日)、『家庭画報』(11年9月号)、『ウィスキーマガジン・ジャパン』(11年秋号)、『美味サライ』(『サライ』11年12月増刊号)、 『CREA Traveller』(12年春号)で紹介されました。