資源保全の環境人類学――インドネシア山村の野生動物利用・管理の民族誌

笹岡正俊
A5判/372ページ/本体4200円+税
2012年6月/ISBN 978-4861870736

インドネシア東部セラム島の山村における長期のフィールドワークを通じて明らかになった
野生動物利用の意味や重要性、その保全に果たす 地域住民の役割。
それは人びとの暮らしを尊重した、住民主体の生物多様性の保全と
資源管理のあり方に大きな示唆を与える。

 

目次

序 章 研究の課題と方法
一 問題の所在と研究の視座
二 研究の方法と本書の構成

第1章 研究対象地の概観
一 マルク諸島の自然と社会
二 アマニオホ村の概況

第2章 狩猟獣のサブシステンス利用―肉の分配の社会文化的意味―
一 サゴ食民の食生活における狩猟資源の位置づけ
二 猟の実際
三 狩猟獣の分配
四 分配を支える社会文化的しくみ
五 生を充実させる営為としての分配

第3章 オウムの商業利用―僻地山村における「救荒収入源」としての役割―
一 おもな交易用野生オウム
二 猟の方法
三 セラム島内陸山地部の村落経済の特徴
四 僻地山村経済におけるオウム猟の位置づけ
五 現金獲得手段としてのオウム猟に対する人びとの評価

第4章 在来農業を媒介とする人と野生動物との双方的なかかわり
―「農」が結ぶ「緩やかな共生関係」―
一 サゴ基盤型根栽農耕と森の親和性
二 半栽培が生み出す多様な生態環境
三 在来農業が結ぶ野生動物と人

第5章 在地の狩猟資源管理―超自然的強制メカニズムが支える森の利用秩序―
一 資源管理と超自然
二 祖霊と精霊が行き交う森
三 森林利用を制御する規範とその社会的・生態学的役割
四 森林利用秩序を支える超自然的強制メカニズム
五 資源管理にみる近年の変化
六 人と自然を媒介する超自然

終 章 住民主体型保全へ向けて
一 セラム島の自然保護に対する提言
二 住民主体型保全に求められる視点
三 民族誌的アプローチの重要性

あとがき
参考文献
索 引

 

編著者プロフィール

笹岡正俊(ささおか・まさとし)
1971年 広島生まれ。
1995年 東京農工大学農学部環境資源学科卒業。
1999年 東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了。
2002年 東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程単位取得満期退学。
2010年 第14回日本熱帯生態学会吉良賞奨励賞受賞。
インドネシア科学院社会文化研究所(PMB-LIPI)客員研究員/日本学術振興会海外特別研究員、
財団法人自然環境研究センター研究員、独立行政法人森林総合研究所特別研究員などを勤める。
現 在 国際林業研究センター(CIFOR)研究員、博士(農学)。
専 門 環境社会学・環境人類学、インドネシア地域研究。
主 著 『躍動するフィールドワーク ――研究と実践をつなぐ』(井上真編、共著、世界思想社、2006年)
『コモンズ論の挑戦――新たな資源管理を求めて』(井上真編、共著、新曜社、2008年)

 

書評

 

書評オープン

 


『林業経済』(13年6月号)、『オルタ』(12年11・12月号)、『グローバルネット』(12年8月号)、読書ガイドWEBサイト「本が好き!BOOKニュース」、「フェアウッド・マガジン 世界のニュース」(メルマガ)、「日本熱帯生態学会ニューズレター」(13年/No.90)などで紹介されました。