ミャンマー・ルネッサンス――経済開放・民主化の光と影

根本悦子・工藤年博 編著
四六判/208ページ/本体価格1800円+税
2013年4月/ISBN: 978-4861871023

軍政から民主化への急激な転換が進むミャンマー
日本からの航空便も復活し、連日満員だ
「知らざれる国」から「アジア最後のフロンティア」へ
現地に精通した研究者・NGOが最新動向を伝える

 

目次


プロローグ  少数民族・辺境に配慮した支援を 根本悦子
1 激しい民族対立
2 民族間のバランスに配慮してきたBAJ
3 民主化のなかで広がる格差
4 日本に求められていること


第1章 アウンサンスーチー――「対話」による国民和解を求めて 根本敬
1 民主化へ向けた一貫した闘い
2 思想の根幹 3 経済開発の考え方――デモクラシー・フレンドリーな投資
4 少数民族問題の克服
5 近代社会へのアンチテーゼ


第2章 ミャンマー・ルネッサンス 工藤年博
1 新しい光景
2 上からの民主化
3 「知られざる国」から「アジア最後のフロンティア」へ
4 「嫌われ者」の問題、「人気者」の課題
5 急いては事をし損じる――ポテンシャルと現実のギャップ


第3章 これからの企業進出 廣瀬さやか
1 白熱する視察ブーム
2 投資の魅力
3 ミャンマーの投資環境
4 ミャンマー企業の特徴
5 日本企業とミャンマーの望ましい関係


第4章 メディアの急速な変化 タウン・ス・ニェイン 1 ワースト・テンからの脱出
2 メディアの現状
3 メディアが直面する課題
4 メディアの責任


第5章 民族対立を超えた技術訓練と人材育成 簑田健一
1 辺境での技術訓練と人材育成
2 民族の和解をめざして
3 自動車の増加と服装の変化 4 都市と地方の格差の拡大 5 民主化のゆくえ


第6章 水は金よりも重い――井戸掘りの支援と村落開発 森晶子
1 中央乾燥地域の村落給水事業
2 新たな展開
3 人材育成の課題
4 水に困らない暮らしをめざして


第7章 利益は現地に還元する 西垣充
1 医療マッサージ事業による視覚障害者の支援
2 ミャンマーの障害者事情
3 現地で活動するNGOのあり方


エピローグ 民際協力がアジアを拓く 中村尚司
1 名状しがたい親近感
2 ドー・スーチーとの再会
3 「おしん」の反省とNGO

 

著者プロフィール

<編著者プロフィール>

根本悦子(ねもと・えつこ)
1947年生まれ。社団法人科学技術と経済の会を経てフリーで企画・編集に従事。1993年に国際協力NGOブリッジ?エーシア?ジャパンを設立し、ベトナムとミャンマーで活動。1995年より代表。
共著=『いっしょにやろうよ最新国際ボランティアNGOガイド』(三省堂、2010年)。

工藤年博(くどう・としひろ)
1963年生まれ。JETROアジア経済研究所主任調査研究員。
主著=『図解 ミャンマー 早わかり』(中経出版、2013年)、『ミャンマー経済の実像──なぜ軍政は生き残れたのか』(編著、アジア経済研究所、2008年)、『ミャンマー政治の実像──軍政23年の功罪と新政権のゆくえ』(編著、アジア経済研究所、2012年)。

<執筆者プロフィール>

根本敬(ねもと・けい)
1957年生まれ。上智大学外国語学部教授。
主著=『抵抗と協力のはざま──近代ビルマ史のなかのイギリスと日本』(岩波書店、2010年)、『ビルマ独立への道──バモオ博士とアウンサン将軍』(彩流社、2012年)、『アウンサンスーチー──変化するビルマの現状と課題』(共著、角川書店、2012年)。

廣瀬さやか(ひろせ・さやか)
大学卒業後、一般企業を経て、国際機関日本アセアンセンター(東南アジア諸国貿易投資観光促進センター)に勤務。2009年より、インドネシアとミャンマーの投資促進を担当。日本企業の進出支援やミャンマーの官民を対象とした産業支援などを行っている。

タウン・ス・ニェイン(Thaung Su Nyein)
1977年生まれ。インフォメーション・マトリックス社取締役、『7?Dayニュースジャーナル』編集長。

森晶子(もり・あきこ)
1971年生まれ。大学卒業後、民間会社、横浜YMCAを経て、2003年にBAJに入職。東京事務所、ヤンゴン事務所コーディネーターを経て、2007年から中央乾燥地のチャウパドン事務所プログラム・マネージャー、2012年からはヤンゴン事務所駐在代表。

簑田健一(みのだ・けんいち)
1951年生まれ、車両関係の民間企業、日本ユネスコ協会連盟、日本国際ボランティアセンターなどを経て、1995年にBAJに入職。マウンドーでプログラム・マネージャーとしてワークショップを立ち上げる。その後、技術専門家としてスリランカ復興支援、ミャンマーのデルタ地域での学校建設などを手掛ける。

西垣充(にしがき・みつる)
1970年生まれ。(株)サネイインターナショナル、(株)ジェイサットコンサルティング代表取締役。
主論文=「信仰心があついミャンマー人とどう付き合うか──説教、祭り、遠慮…仏教的要素に関心を」『週刊東洋経済』2012年8月25日号、共著=『インド・ミャンマー投資ガイド』(みずほファイナンシャルグループ、2005年)、『NHKデータブック世界の放送2012』(NHK出版、2012年)。

中村尚司(なかむら・ひさし)
1938年生まれ。NPO法人JIPPO専務理事、NPO法人パルシック理事。アジア経済研究所を経て、龍谷大学教授を務める。
主著『豊かなアジア貧しい日本』(学陽書房、1989年)、『地域自立の経済学』(日本評論社、1993年)、『人びとのアジア』(岩波新書、1994年)。

 

書評

 

書評オープン

 民主化へかじを切ったミャンマー。「知らざれる国」から「アジア最後のフロンティア」へと変わりゆくこの国の現状を、国際協力NGOやアジア経済の専門家ら9人が解説する。
最大野党の党首アウン・サン・スー・チー氏の27年ぶりの来日が大きく報じられ、日本企業の新たなビジネスの進出先としても熱い視線を浴びる。一見、順風満帆のようだが、そこには副題通り「光と影」がある。
軍事政権という霧は晴れたが、現れたのは、可能性を秘めてはいるものの開発が進まない最貧国の姿。インフラは未整備、人材も不足している。都市と地方の格差拡大も懸念材料だ。
ミャンマーブームだが、執筆者の一人は日本も国際社会も今は焦らず、長い目で国造りを支える姿勢が必要だと説く。本書はミャンマーを知るための入門書であり、ビジネス書であり、民主化という奔流を生きるミャンマーの人たちへのエールでもある。

『共同通信配信書評記事』(13年5月26日)

 ミャンマー(ビルマ)と対等・平等な関係を築こうと努力してきた人びとが政治・経済・社会の最新ミャンマー事情を紹介する。都市と農村格差が広がり、頻発するようになった民族対立の中で日本はどういうスタンスで協力、支援すればいいのか、の提言も。最新報告の内容はさすがに新鮮だ。

『エコノミスト』(13年6月4日号、抜粋)


「日刊工業新聞」(13年4月29日、6月6日)、「エコノミスト」(13年6月4日号)、「信濃毎日新聞」(13年5月26日)、「佐賀新聞」(13年6月9日)、「上毛新聞」(13年6月23日)、「山形新聞」(13年7月7日)などで紹介されました。