「走る原発」エコカー――危ない水素社会

上岡直見
A5判/136ページ/本体1500円+税
2015年7月/ISBN 978-4-86187-125-2

※日本図書館協会選定図書(第2963回)

燃料電池車の燃料・水素は原子炉(高温ガス炉)で製造される。
電気自動車やハイブリッド車の普及も電気の大量利用につながる。
エコカーの名の下で進む原発延命策を論理的に批判。小出裕章氏との対談収録。

目次

はじめに

対 談 誰のための燃料電池車・電気自動車なのか
小出裕章・上岡直見

第1章 燃料電池車・電気自動車と原子力の深い関係

「究極のエコカー」の正体は?
日本全体のエネルギーフロー
多岐にわたるエコカー
エコカーの燃費とCO2排出量
エコカーも環境を汚染する
エコカーへの多額の補助金
水素スタンドが足りない
単なるデモンストレーション
電気自動車は「走る原発」
夜間電力が余るから電気自動車?
「寒い」電気自動車
スマートグリッドは「スマート」か
実在しないシステム
ワイヤレス充電と電磁波公害
実は普通の自動車も「走る原発」
省エネ効果が不明なエコカー

第2章 「夢の水素社会」は本当か?

水素利用の歴史
原子力と表裏一体の「水素社会」
「MIRAI」の「燃費」をチェックしてみた
水素は「いくら」か
燃料電池車は補助金で走る
水素の作り方
水素の輸送と精製
「CO2フリー水素」のまやかし
無尽蔵神話
再生可能エネルギーで作ればいい?
「大きな水素」社会と「小さな水素」社会

第3章 原子力延命策としての高温ガス炉

復活した高温ガス炉
高温ガス炉は「青い鳥」か
高温ガス炉の構成
燃料と炉心の構造
80基以上が必要になる
「今度は大丈夫」と言えるのか
数多くの問題点
使用済み燃料の処理のために推進
使用済み燃料の貯蔵場所がなくなる

第4章 原発は地域に貢献していない

自動車こそ「国富」の流出
エネルギー支出の減少が経済にはプラスになる
原子力施設立地による所得・雇用効果はあるのか
原発受け入れ市町村とお断り市町村の比較
電力供給地の偏在と立地自治体の経済
「自給」の意義

結びに代えて 安倍政権の真の危険性

著者プロフィール

上岡 直見(かみおか・なおみ)

1953年 東京都生まれ。
1976年 早稲田大学大学院修士課程修了。技術士(化学部門)。
1977~2000年 化学プラントの設計・安全性審査に従事。
現 在 環境経済研究所(技術士事務所)代表、法政大学非常勤講師(環境政策)。
主 著 『交通のエコロジー』(学陽書房、1992年)、『自動車にいくらかかっているか』(コモンズ、2002年)、『持続可能な交通へ――シナリオ・政策・運動』(緑風出版、2003年)、『市民のための道路学』(緑風出版、2004年)、『脱・道路の時代』(コモンズ、2007年)、『高速無料化が日本を壊す』(コモンズ、2010年)、『脱原発の市民戦略』(共著、緑風出版、2012年)、『原発も温暖化もない未来を創る』(共著、コモンズ、2012年)、『日本を壊す国土強靱化』(緑風出版、2013年)、『原発避難計画の検証――このままでは、住民の安全は保障できない』(合同出版、2014年)


対談 小出裕章(こいで・ひろあき)

1949年、東京都生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、同大学院修了。1974年4月から2015年3月まで京都大学原子炉実験所助手・助教。一貫して「原子力をやめることに役に立つ研究」を行い、反原発運動の理論的支柱として活動してきた。著書に、『原発のウソ』(扶桑社新書、2011年)、『放射能汚染の現実を超えて』(河出書房新社、2011年)、『隠される原子力 核の真実』(創史社、2011年)など。

書評

「週刊朝日」(15年10月30日号)、「ガバナンス」(15年9月号)、「クレヨンハウス通信」(vol.417/15年10月1日発行)、「市民科学研究室」(Web上、15年10月5日)、「出版ニュース」(15年10月上旬号)、「週刊金曜日」(16年7月15日号)、「東京新聞」(首都圏版:2020年10月17日)などで紹介されました。