有機農業という最高の仕事――食べものも、家も、地域も、つくります〈有機農業選書8〉

関塚学
46判/236ページ/本体価格 本体1700円+税
2019年2月/SBN978-4-86187-157-3 C0036


有機農業で生きていきたいという夢を実現し、経営的にも成功し、
素敵な家をハーフビルドで建て、地元住民と仲良く地域おこし。
全国の若手有機農業者のリーダーが、仕事・暮らし・さまざまな自給、
そして「最高の人生の選択」を書き下ろし。生き方に迷う若者の指南書

 

目次


プロローグ 生き方・哲学としての有機農業


第1章 有機農業は面白い


1 有機農業との出会い
2 念願の新規就農
3 楽しい有機農家の日々
4 IT時代の有機農業経営論 

第2章 有機農家の農産加工は楽しくて美味しい

1 農産加工は楽しい
2 美味しい農産加工品のつくり方
(1)漬け物  (2)米味噌  (3)納豆  (4)麹  (5)日本酒
(6)ビール  (7)ワイン  (8)焼酎 (9)醤油
3 これから取り組みたい農産加工

第3章 自分たちで建てた土壁の家

1 ハーフビルドは難しくない
2 幸福を生む住まい
3 憧れの竹小舞下地の土壁の家

第4章 あらゆる自然エネルギーを取り入れる

1 エネルギーだって、なるべく自給したい
2 薪と炭を使いこなす
3 電気や石油の消費量を減らす
4 これから取り組みたい自然エネルギー

第5章 ちょっとしたコツで健康に暮らす

1 健康に生きるための工夫
2 健康になるための食べ方
3 体を整える

第6章 イノシシ・シカ・サル・ハクビシンと格闘

1 獣害対策しながら営農
2 獣害が広がる理由と採るべき対策
3 地域ぐるみの獣害対策
4 田畑を獣害から自分で防ぐ方法

第7章 日本酒とワインと地域おこし

1 あきやま有機農村未来塾をつくる
2 酒米を有機栽培して地酒をつくる
3 ヤマブドウで夢の国産無農薬ワインをつくろう
4 自家用のお茶の木で茶摘みイベント
5 空き家をお試し住宅に

第8章 農で自立して生きていくための極意

1 やる気とパートナーと資金
2 新規就農で成功するポイント
3 現代ほど有機的な暮らしが実現できる時代はない

著者プロフィール

関塚学(せきづか・まなぶ)
1973 年、埼玉県生まれ。大学卒業後サラリーマンになるが、1 年で辞めてワーキングホリデーでオーストラリアへ。帰国後、有機農業を志し、研修を経て、2002 年に栃木県佐野市秋山地区に新規就農。現在の経営規模は田108a、畑104a、平飼い養鶏300 羽。野菜は年間60種類を栽培。日本有機農業研究会理事、あきやま有機農村未来塾事務局長。

 

書評

 

書評オープン

本書は、どこにでもいる青年が地域のリーダーとして活躍し、「生まれ変わっても、もう一度有機農家になりたい」と語るまでを描いた「最高の仕事の物語」だ。
彼の仕事は、単に農業と化学肥料を使わずに米や野菜を作るだけではない。みそや納豆などを手作りするほか、土壁の家をハーフビルドしたり、自治体を巻き込んで獣害対策にも取り組む。「有機農業とは生き方であり、哲学である」と語る。お金や効率優先の生き方とは違った、持続可能な社会に貢献できる暮らしを実現している。

『ガバナンス』(2019年4月号)

評者は、有機農業をどう捉えているのかに関心を持った。この点について、不達の切り口から見ていく。一つは自給へのこだわりである。著者にとって自給とは、主体的に暮らしと仕事を創ることで、全ての営みの起点となっている。その実践を豊かにする手段として有機農業が位置付けられている。「有機農業的な価値観」と表現がある通り、有機農業が大切にしている「自然共生」「循環」「多様性」という価値観で暮らしと仕事を組み立てていると感じた。もう一つは自給の分かち合いである。本書には、実に多くの人たちが登場する。自給おちう豊かさを独り占めせず、「有機的な人間関係」の中で実現していることがわかる。例えば、田植えや稲刈り体験、料理教室、みそ造りなどさまざまなイベントを行い、関塚農場のファンをつくりながら、食と農のつながりを構築している姿が印象的だ。これも有機農業が大切にしてきた実践であり、価値観である。これからの暮らし、地域、社会の在り方が自給とつながりを重視した豊かさを通じて可能になることを、現場からの説得力ある文章で示す好著といえる。

評者:千葉商科大学専任講師 小口広太

『日本農業新聞』(2019年5月26日)


『ガバナンス』(2019年4月号)『月刊クーヨン』(2019年6月号)、『全国農業新聞』(2019年5月10日)、『ふぇみん』(2019年5月25日)『日本農業新聞』(2019年5月26日)、『食べもの文化』(2019年8月号)、『農業ビジネス』(2019年夏号)、『技術と普及』(2019年11月号)、『農業と経済』(2019年11月号)、「有機農業研究」(日本有機農業学会、11巻2号2019年)、『土と健康』(22年11・12月号)で紹介されました。