開発援助か社会運動か

−現場から問い直すNGOの存在意義

定松栄一(元シャプラニール・ネパール駐在員)
四六判/256ページ
本体2400円
+税
2002年11月/2刷

ISBN-10: 4906640583
ISBN-13: 978-4906640584




援助はもっとも必要とする人びとに本当に届いているのか。
政治の問題を避けていないか。ネパールはじめ長年の途上国における現場体験から、開発協力とNGOの活動のあり方と真の役割を真摯に問う。

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<目次>

第1章 ネパールの奴隷? 
NGOの支援先の調査でネパールへ/三つの顔をもつ国/債務労働者になった先住民族タルー/タイムスリップした村/住民の意思を尊重?/地主主導の「住民グループ」

第2章 日赤からシャプラニールへ 
海外協力の世界に入ったきっかけ/アフリカ救援の嵐のなかで/専門分野はなかったが、役割を見つける/機能しなかった「住民組織」/「意識化」と出会う/赤十字社に戻ったものの…/シャプラニールの活動を知り、興奮/転職を決意/活動現場を訪ねて見えてきたこと/新しい活動対象国

第3章 誰と組むか 
再びネパールへ/叩き上げのNGO/エッセイの引き合わせ?/一日がかりでSPACEの活動地へ/貧困の原因は何か/住民グループはどのようにできたのか/住民グループに聞く/ケシャブとカマイヤ

第4章 カマイヤの実態と土地獲得運動 
ラジャプールでの挫折/困難を乗り越えてまとめられた調査報告書/恐るべき実態/不可解な事実/土地を獲得したカマイヤ/死傷者が出たカナラ運動/解決に向けた政府の動き

第5章 住み込み調査開始 
東京の反応/突然の結婚/住民が主体となる識字教育の手法/カナラ運動のリーダー/調査の骨格を決める/当初は途方に暮れたメンバーたち/徐々に信頼を勝ち得ていく/黒板を自ら作った女性たち/教科書のない識字学級/寝耳に水/発病そして一時帰国

第6章 提出された報告書 
適切だったネパール人医師の処置/カマイヤの起源とタルー社会の共同生産の仕組み/ネパール統一の歴史とタルー/土地を奪われたタルー/変質したカマイヤの概念/再定住運動が成功した理由/調査結果が意味するもの

第7章 暗転 
物別れに終わった交渉/ラメッシュの反発/直接交渉/一時撤退/SPACEからの糾弾

第8章 見えてきた方向性 
SPACEへの反論/私たちに非はなかったのか/再定住民に生まれた三つの階層/住民との分かち合いに向けて

第9章 つぶしかけた現場からの声 
調査者から支援者へ/活動地域を変更して試験プロジェクトを開始/教科書を望んだ住民たち/ジャガッドの疑問やコンサルタントの警鐘を無視/崩れたシナリオ/魔の三カ月と食糧購入ローン/仲間でつくる基金/住民には何が問題だったのか/最初の実り/事務局長の困惑と確信/計画の変更/住民自身によるステップアップ

第10章 成功? それとも失敗? 
五年ぶりの日本で消耗/カマイヤの解放と、私のとまどい/NGOの役割と「政治的中立」/成功? それとも失敗?/「住民主体の開発」を見直したい/住民たちがグループづくりを担う動き/混沌とした土地獲得運動/改めてNGOの役割を考える/再訪した村での語り合い/援助が規定する関係性/もうひとつの意外な知らせ

第11章 「開発プロジェクト」を超えて 
プロジェクトからアドボカシーへ/リスクを引き受けられるか/どうやって行動を起こすか/カマイヤ自身による請願書の提出/郡庁そして首都、国会へ/八〇〇〇世帯が再定住用の土地を確保/私たちは正しかったのか

第12章 NGOの存在意義を問い直す 
いまも続く土地獲得運動/「理解」と「感じる」の違い/貧困問題と人権は切り離せない/市民による「人道的介入」/NGOの存在意義/もっとも大切な二つの問い/どのような関係が求められているのか?



<書評>

 以下、メールマガジン「開発メーリングリスト」で紹介されました。
『開発援助か社会運動か−現場から問い直すNGOの存在意義』定松栄一著(コモンズ)

 この本は、著者、定松栄一氏が、自ら開発援助の現場に関わってきた18年間を振り返る、という形で書かれている。
 大学卒業後、日本赤十字の「外事部」に就職した著者が、エチオピアで赤十字が開始した「災害予防プロジェクト」の現場スタッフとして働いたあと、マンチェスター大学で開発学を学び、さらに、NGOシャプラニールのネパール駐在員として、債務農業労働者の問題や、ネパールのNGOの人々と関わっていくことを通して、「開発協力とは何か?」ということについての考えを深めていく過程が描かれている。
 日本のNGOとして、ネパール農村部の地主と契約労働者をめぐる複雑な社会問題に、いかにして関わっていくことができるのか、政治との関わりを避けながら本当の開発協力ができるのか、さらには「パートナー」である地元NGOと「ドナー」である自分たちの間でおこるすれ違いなど、開発に関する複雑で微妙な問題が、実例に即して率直に描かれており、読者は著者の辿って来た道を追体験しながら、それらの問題について、著者とともに具体的に考えていくことが出来る。
 すでにこの分野で働いている人々はもとより、これから開発協力に関わっていこうと思っている人たちにもおすすめできるすばらしい一冊である。(藤倉達郎)

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 海外支援組織・シャプラニール(NGO)のネパール駐在員として1994年から5年間過ごした著者が「カマイヤ」と呼ばれる債務労働者の自立支援に取り組んだ。カマイヤを高利の借金で縛る地主。代々"奴隷"に甘んずる彼らは土地獲得運動を進めるが、さまざまな困難に直面する。著者は「私が何をしたか」と同時に「何をしなかったか」を詳細に記録。開発援助とは何かを問い掛けている。(『中日新聞』03年2月16日)


 このほかにも、『国際協力プラザ』(03年1月)、債務と貧困を考えるジュビリー九州『CRUSH the odious DEBT』(vol.28、09年4月)でも紹介されました。