『日本軍に棄てられた少女たち
―インドネシアの慰安婦悲話』

プラムディヤ・アナンタ・トゥール著/山田道隆訳
2800円+税/四六判、280ページ





◎プラムディヤ・アナンタ・トゥール◎
1925年、インドネシア・ジャワ島生まれ。オランダからの独立闘争に参加後、創作活動を始める。69〜79年に政治犯としてブル島に流刑中に構想を得た大河歴史小説などでノーベル賞候補となる。
邦訳=『プラムディヤ選集1〜6』(めこん)。
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インドネシア占領中の日本軍にだまされて「性の奴隷」にされ、失意のもとに暮らしたジャワ島出身の女性たちの生涯を描いた作品。
ノーベル賞受賞候補作家の最新作。解説=内海愛子

◎書評
 痛みを抱き締めながら、インドネシアの小さな島で生き続けた「従軍慰安婦」たちの物語だ。著者はインドネシアのブル島に政治犯として十年間、流刑の身にあった作家。流刑中に出会ったジャワ島出身の女性たちは、旧日本軍に「だまされ」「棄てられた」犠牲者だった。旧日本軍は「日本やシンガポールに留学させる」という名目で少女を集め、実際は慰安婦としてアジア各地に送り込んでいたのだ。犠牲者が高齢化する一方の慰安婦問題のあらたな事実も浮き彫りにしている。(『熊本日日新聞』『信濃毎日新聞』04年9月26日、共同通信配信)
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 旧日本軍はアジアの各地で多くの女性たちを「性の奴隷」として扱ってきた。なかでも、この本が記すインドネシアのブル島に今も暮らす元慰安婦たちの話はまさに悲劇である。
 少女であれば反抗する力もないと考えた日本軍は成人前の少女を、東京や昭南島(現在のシンガポール)への留学話で集め、日本兵をもてなす仕事につかせ、日本軍の降伏の後にはブル島に棄て置いたままにしてしまった。その後、彼女たちは故郷にも帰れないままブル島で過ごし、地元男性の所有物として扱われた者さえあったという。本書はその経験をノーベル文学賞候補となったこともある著者が淡々と書いたもので、行間からは彼女たちの無念さが痛いほどに伝わってくる(『出版ニュース』04年9月下旬号)
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 著者プラムディア氏が「棄てられた少女たち」に出会ったのは、「九・三〇事件」(一九六五年のクーデター未遂事件)でスハルト政権に事件の間接的関与の濡れ衣を着せられ、十年以上にわたり政治犯の流刑地ブル島で流刑生活を送っていたときだった。
 彼が記録した女性たちはブル島の人間ではない。インドネシアが日本の占領下にあった時代に、「東京で勉強させてやる」という日本軍の「甘い罠」にはまり、ブル島に連れていかれて日本軍の「慰安婦」にさせられたジャワ人の「少女たち」だった。
 本書を読みながら、絶望の淵で孤独に苛まれ生き続けてきた「少女」たちに、私は出口のない悲しみに襲われ、心に針が突き刺さるような痛みを覚えた。彼女たちを絶望に追いやってきたのは誰か。彼女たちを連行し棄て去った日本軍だけといえるのか。戦後、彼女たちを歴史から、記憶から消し去ってきたのは何だったのか。本著はそれを読者に問い掛けている。(『赤旗』04年10月10日)

 そのほか、『Woman's EYE』(2004年10月号)、『オルタ』(2004年11月号)でも紹介されました。

<目次 >
第1章  甘い約束 
第2章  公然の秘密 
第3章  苦しみ積んだ輸送船 
第4章  異国に棄てられた少女たち 
第5章  ブル島に棄てられた少女たち
第6章  運命の出会い 
第7章  ボランサル別名ムカ・ジャワを追って
第8章  ムリヤティの足跡を追って
<解説> 実現されないプラムディヤの願い─―内海愛子
プラムディヤ・アナンタ・トゥール氏を訪ねて─―山田道隆