海境を越える人びと
  ――真珠とナマコとアラフラ海

村井吉敬・内海愛子・飯笹佐代子 編著
A5判/308ページ
定価3200円+税
2016年5月


ISBN 978-4-86187-133-7


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日本・オーストラリア・インドネシアの間の海域では、
真珠やナマコなどをめぐって国家の枠にとらわれず人びとが移動してきた。
アラフラ海を中心に19世紀半ばから現代に至るヒトとモノの交流・交易史。



<目次>

はじめに

第Ⅰ部 日本・オーストラリア・インドネシアをつなぐ海域

 第1章 海の民と先住民の交流史  村井 吉敬
   一 東南アジアとオーストラリアはつながっていた
   二 モンスーンの吹く港――ナマコ漁の背景
   三 帆船はモンスーンに乗って――ナマコ船団
   四 タマリンドの樹の下で――アボリジニとインドネシア諸島民
   五 国境に封じ込められる歴史

 第2章 アボリジニの大地と海――北オーストラリアでの出会い  村井 吉敬
   一 「普通の」アボリジニ
   二 エビの町カルンバ
   三 白人の囲い込み・アボリジニの閉め出し
   四 ナマコ交易

第Ⅱ部 真珠(貝)産業の興亡

 第1章 アラフラ海の日本人ダイバーたち  鎌田 真弓
   一 ダーウィンの墓標
   二 オーストラリアに渡った日本人ダイバーたち
   三 危険と隣り合わせの潜水
   四 ダーウィンの真珠貝産業
   五 アボリジニによる日本人漁師殺害事件
   六 日本船のアラフラ海出漁とオーストラリアの警戒
   七 太平洋戦争と真珠貝産業の終焉

 第2章 ボタンから宝石へ――オーストラリアの南洋真珠養殖の始まり  田村 恵
   一 赤道を越え
   二 南洋真珠と養殖
   三 アラフラ海真珠貝採取と栗林徳一
   四 オーストラリアでの南洋真珠養殖計画
   五 真珠養殖の始まりと発展

第Ⅲ部 翻弄される出稼ぎ――国家の間で生き

 第1章 真珠ダイバーの夢の跡――アル諸島ドボの日本人街  内海 愛子
   一 南洋航路と出稼ぎ
   二 出稼ぎの夢を託した街――アル諸島ドボ
   三 ダイバー林春彦
   四 戦争に翻弄されたダイバー
   五 エビの基地アル諸島

 第2章 捕虜になったダイバーたち――日本とオーストラリアの狭間で  永田由利子
   一 連邦政府成立以前のオーストラリア
   二 オーストラリアの日本人真珠貝労働者
   三 戦時強制収容
   四 捕虜交換要員としての真珠貝労働者
   五 終戦と戦後

第Ⅳ部 記憶と表象

 第1章 波間に消える真珠貝漁業  松本 博之
   一 木曜島の記憶
   二 村から木曜島へ
   三 木曜島から漁場へ
   四 水深という難題
   五 潜水方法と風・潮
   六 潮の濁り・風・漁場移動
   七 「死に金」か「抜き金」か
   八 道具の人間化、あるいは人間の道具化
  コラム① 真珠貝漁業の住と食

 第2章 オーストラリア文学に描かれた日本人  加藤 めぐみ
   一 オーストラリア社会と日本人
   二 ダーウィンの日本人とオーストラリア文学
   三 ブルームの日本人とオーストラリア文学
   四 真珠貝採取業と他者表象

第Ⅴ部 越境する人びと

 第1章 越境する海の民  村井 吉敬
   一 国家を超える民族集団バジャウ
   二 二つの領海侵犯事件
   三 バジャウとはどんな民族集団なのか
   四 エスニシティのゆらぎ
   五 天空ほどに高く、海原ほどに深い

 第2章 希望を求めて海を渡る――「ボートピープル」になった人びと  飯笹 佐代子
   一 海の移動を余儀なくされた人びと
   二 ヴェトナムからオーストラリア本土へ――一九七六~八〇年代
   三 インドネシアからオーストラリア領土への密航――一九九〇年代〜二〇〇〇年代初め
   四 混迷化する世界、増加するボートピープル――二〇〇八年以降
   五 希望に向けた航海を阻むもの――なぜボートピープルは厳しく排除されるのか
 コラム② タンパ号事件とSIEVXの悲劇

 終章 海域研究への道  松本 博之
   一 村井・内海の海の道
   二 本書への道
   三 海域研究への道

 あとがき

 本書に関わる主な出来事

 索 引




<編著者プロフィール>

村井 吉敬(むらい・よしのり)
上智大学名誉教授、東南アジア社会経済論、主著『エビと日本人』(岩波新書)、2013年逝去。

内海 愛子(うつみ・あいこ)
大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター所長、日本-アジア関係研究、主著『朝鮮人BC級戦犯の記録』(岩波現代文庫)。

飯笹 佐代子(いいざさ・さよこ)
青山学院大学教授、多文化・多民族社会論、主著『シティズンシップと多文化国家』(日本経済評論社)。


<書評>
「 本書は、3名の編者による作品である。筆頭編者の村井吉敬は、思いがけない大病のため、編集途中で帰らぬ人となった。しかし本書はの基調は、村井の編集方針でほぼ貫かれている。アラフラ海をめぐる真珠とナマコの交易を追いかけ、近代国家が抑圧した民衆や少数民族の正業にまなざしを向け続けたのは、村井である。(中略)
『海境を越えた人びと』という表題は、耳慣れない言葉である。架空の海境概念によって、近代国民国家の無理を私たちに教えている。領海や排他的経済水域が定められる国家意志に関与しなおいパジャウ人と、海の国境を乗り越えようとするボートピープルは、まったく別の出自とはいえ、共に人類の過去と未来を表象しているのである。排外主義の嵐が吹きすさぶ現代において、本書の刊行は時機を得た企画であり、多くの読者を獲得することを期待したい。全体として丁寧に編集されていて、参照文献、挿入された図表、地図、写真、年表、索引などを含め、学術的な価値も高い。」
                            「アジア太平洋学術センター年報 第14号 2016-2017」より抜粋


 「キャプテン・クックがオーストラリアに到着する以前から、インドネシア諸島の人々はオーストラリアの先住民アボリジニと干しナマコの交易を行った。
文化面ではアボリジニの芸術、儀礼等にはマレー系文化の影響がみられ、交流があったこともわかる。
また、真珠貝がボタンの材料として使われた時代には、多くの日本人ダイバーがアラフラ海の採貝に従事し、大併用戦争が始まると適性外国人という理由で収容所に入れられた。
本書では、これらの歴史や人々の足跡を、国ごとの分断された事象として捉えるのではなく、日本、インドネシア、オーストラリアをつなぐ海域の歴史という視点で眺める。」
                              「出版ニュース」(16年8月中旬号)


「アジア太平洋研究センター年報 第14号」(2017年3月10日発行)、(「出版ニュース」(16年8月中旬号)などで紹介されました。
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