『ヤシの実のアジア学』

鶴見良行・宮内泰介編著
96年/A5版/360ページ/3200円+税

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◎書評
「朝日新聞」(96年12月1日)・抜粋
 ヤシ。遠い南国の植物と思いがちだが、私たちの暮らしと密接に結びついている。洗剤をはじめ、油、タワシ、活性炭などの原料の多くはヤシ。輸入量が飛躍的に伸び、日本人の「便利で清潔な生活」を支える一方で、現地ではプランテーションによる環境破壊も進んでいる。そんなヤシについて、「ヤシ研究会」が国内の使われ方や海外の栽培現場を調べた結果を報告書として、「ヤシの実のアジア学」という本にまとめた。
 「ヤシ研究会」は1988年、「バナナと日本人」「ナマコの眼」などの著書がある故鶴見良行さんが呼びかけ、結成された。メンバーは最盛時で、大学の研究者や会社員、学生ら約四十人。日本でヤシがどのように使われ、また、栽培する住民の暮らしはどうなっているのか。そんな疑問が研究会のスタートだった。
 消費されるパーム油の68%が食用。健康志向の高まりから「植物性油脂」が好まれるようになったという。油脂の8割にパーム油を使うという即席めんやスナック菓子の分野での利用が多い。
 研究会の主要メンバーの宮内泰介・福井県立大助教授は「ヤシは目に見えないところで私たちの日常を取り囲んでいる。普通の人にも興味を持ってもらい、ここから身近な問題として、関心が広がってくれればいい」と話している。


<目次>
●第1部 ヤシと日本人
<コラム>ヤシとアジアと日本    <鶴見良行>
第1章 見えるヤシから見えないヤシへ   <宮内泰介>
第2章 日本人の食を変えたヤシ   <石川清>
第3章 清潔シンドロームがヤシを招く   <石川清>
第4章 ヤシの実六億七〇〇〇万個の憂鬱   <藤林泰>
第5章 タワシと私     <田中里恵子>
<コラム>アジアの暮らしを結ぶ「海の道」    <鶴見良行>

●第2部 ヤシのある暮らし
第1章 サゴヤシの社会史    <宮内泰介>
第2章 ヤシ酒呑みのヤシ酒紀行    <赤嶺淳>
<コラム>ネグロス島のヤシ酒    <佐竹眞明>
第3章 ヤシのある風景と生活    <森本孝>
第4章 ココヤシの姉妹スリランカ    <白蓋由喜>
第5章 パルミラヤシからの地域づくり    <パルミラヤシ職業開発グループ>
<コラム>海から陸を見る   <鶴見良行>

●第3部 商品化と多国籍企業・プランテーション
第1章 アブラヤシ生産とマレーシア    <加治佐敬>
第2章 マレーシアのアブラヤシ・プランテーション  <リム・テック・ギー/スミタ・ガネーシャラトナム>
第3章 アブラヤシ生産の発展と移民労働者     <鶴見良行>
第4章 フィリピンのココヤシ化学産業     <M・Eバイチョン/C・アキノ/R・ティグラオ>
<コラム>フィリピンとココヤシ    <赤嶺淳>
第5章 アブラヤシ・プランテーションの乱開発     <鈴木宏二>

ヤシ研究会と鶴見良行さん−あとがきに代えて    <宮内泰介>