自由貿易は私たちを幸せにするのか?[2刷]

上村雄彦・首藤信彦・内田聖子ほか著
四六判/172ページ/2刷
定価1500円+税/2017年2月
ISBN 978-4-86187-139-9

いま世界中で自由貿易に対する疑問の声が湧き上がっている。
トランプのアメリカ、EU離脱のイギリス……
問題の本質は「自由貿易VS保護貿易」という対立ではない。
環境や人権を守り、貧困・格差を是正する新たな貿易ルールが求められる。
内外の研究者やNGOリーダーによる分析と提案。

 

目次

序 章 公正な貿易のルールを創りだす/内田聖子

1 メガ経済連携協定時代の終わりの始まり?
2 矛盾を生み出し続ける貿易と日本の課題
3 本書の構成

第1章 人びとを幸せにする貿易協定を求めて
——世界「貿易」の変容とメガ経済連携協定の脅威にどう立ち向かうか/首藤信彦

1 メガ経済連携協定の時代
2 貿易の変容と消滅
3 貿易思想の変遷――自由から正義へ
4 経済大国の横暴へ盛り上がる批判
5 貿易における正義の視点
6 グローバル経済における貿易協定に必要な価値
7 人びとを幸せにする貿易協定をもとめて

第2章 自由貿易にNO!と言う欧米の市民社会
メリンダ・セント・ルイスXローラ・ブルュッヘX内田聖子

大企業がつくる民主主義に反した秘密協定
アメリカでも期待されていないTPPの経済効果
グローバルに進む規制緩和
投資家の利益を守るためのISDS
多様な人びとの参加

第3章 途上国にとってのメガ経済連携協定
——貧困・開発・人権と貿易はどのように調和できるのか/内田聖子

1 もうひとつの「秘密」交渉
2 日本でまったく注目されないRCEP
3 命をつなぐ医薬品アクセスの危機
4 農民の種子に関する権利が脅かされる
5 高まるISDSへの批判
6 達成できなかった国連ミレニアム開発目標
7 貿易や投資に貧困削減や格差の是正などを埋め込む

第4章 自由貿易で誰が得をし、誰が損をするのか
——「経済効果の」真実/ジョモ・K・スンダラム

1 アメリカ政府による経済効果の誇大宣伝
2 貿易による経済効果の真実
3 日本とマレーシアの試算
4 誰のためのルールなのか

第5章 多国籍企業をどのように規制するか
——パナマ文書とグローバル・タックス/上村雄彦

1 危機的な地球環境とグローバル格差社会
2 国を凌駕する多国籍企業
3 タックス・ヘイブン――パナマ文書が明らかにしたこと
4 グローバル・タックスの仕組み

あとがき/内田聖子

 

編著者プロフィール

 

上村雄彦(うえむら・たけひこ)
横浜市立大学学術院国際総合科学群教授。大阪大学大学院法学研究科修士課程、カールトン大学大学院国際関係研究科修士課程修了。博士(学術、千葉大学)。国連食糧農業機関住民参加・環境担当官、千葉大学地球福祉研究センター准教授などを歴任。グローバル連帯税推進協議会委員、グローバル連帯税フォーラム理事なども務める。著書に『グローバル・タックスの可能性――持続可能な福祉社会のガヴァナンスをめざして』(ミネルヴァ書房、2009年)『世界の富を再分配する30の方法』(編著、合同出版、2016年)、『不平等をめぐる戦争――グローバル税制は可能か?』(集英社新書、2016年)など。

首藤信彦(すとう・のぶひこ)
国際政治学者。伊藤忠商事勤務後、ジョンズホプキンス大学SAIS客員研究員、INSEAD客員教授、東海大学教授、衆議院議員(民主党、3期)などを歴任。
専門は危機管理、予防外交、テロリズム研究。民主党内ではいち早くTPPへの安易な加盟に対して反対を表明し、TPP交渉のウォッチと情報分析、発信を積極的に行ってきた。著書に『現代のテロリズム』(岩波ブックレット、2001年)、『政治参加で未来を守ろう』(岩波ジュニア新書、2006年、『TPPで自滅する日本型産業社会』(集英社イミダス(ネット版)、2016年)など。

内田聖子(うちだ・しょうこ)
NPO法人アジア太平洋資料センター(PARC)共同代表。慶應義塾大学文学部卒業。出版社勤務などを経て2001年より同センター事務局スタッフ。自由貿易・投資協定のウォッチと調査、政府や国際機関への提言活動、市民キャンペーンなどを行う。TPPウォッチの国際NGOネットワークにも所属し、アメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、マレーシアなどの市民社会とともに活動。共著に『徹底解剖国家戦略特区――私たちの暮らしはどうなる?』(コモンズ、2014年)など。
PARCのウェブサイトブログ

メリンダ・セント・ルイス(Melinda St. Louis)
アメリカ・ワシントンに拠点を置く市民団体パブリック・シチズンの「Global Trade Watch」(貿易・投資問題の担当部署)国際キャンペーン責任者。途上国の債務帳消しを求める国際キャンぺーンの「ジュビリーアメリカネットワーク」に所属し、アフリカ・アジア、中南米の債務問題解決の主要人物。TPPやTTIPに関しても、精力的に情報収集と発信を行ってきた。パブリック・シチズンは1971年にラルフ・ネーダー氏が設立した消費者団体で、貿易、投資、環境、人権など幅広い分野で国会議員や政府へのロビイ活動やキャンペーン、情報発信を行う。
パブリック・シチズンのウェブサイト

ジョモ・K・スンダラム(Jomo Kwame Sundaram)
経済学者。マレーシア生まれ、イェール大学、ハーバード大学卒業。2005~12年に国連経済社会局経済開発部事務局次長を務めたのち、国連食糧農業機関(FAO)経済・社会開発局の事務局次長兼コーディネーターとなる。2007年に、経済学のフロンティアを切り開いた若手に贈られるワシリー・レオンチェフ賞を受賞。2008~09年には、第63代国連総会議長を務めたニカラグアのミゲル・デスコト・ブロックマン氏のアドバイザーとしても活躍。ブロックマン氏は、IMF体制の改革に関する国連専門家で構成する委員会のメンバーでもあった。

 

書評

 

「政府は、TPPが貿易自由化により国民に成長と雇用増加をもたらすと喧伝してきた。負の影響は農業に限定されるとし、どう保護/解放すべきかにもっぱら焦点が当てられてきた。
しかし実のところ、農業をはじめとする「モノの貿易」は、TPP協定のほんの一部にすぎない。本書は、全編を通じてTPPの本質が、多国籍企業の投資自由化にあると鋭く指摘する。多国籍企業の投資を妨げる障壁、それは貿易相手国の税制であり、国民の健康、安全、環境を守る規制であり、あるいは独自のビジネス慣行だったりする。これらを除去し、多国籍企業の収益最大化への道を敷き詰めることこそ、TPPの最大の眼目である。
多国籍企業の権益はTPPを通じて強化される。経済の主戦場は、すでにモノからサービスへ、さらには知的財産などの無形資産に移行している。例えば、医薬品に関する知的所有権保護の強化で多国籍企業の収益は底上げされる一方、それによるコスト増加は、国民の医療費に転嫁される。極めつきは、「ISDS(国家と投資家の間の紛争解決)条項」だ。これは、自国民の健康・安全、あるいは環境保護のため多国籍企業を規制した場合、彼らが「損失を被った」として該当国政府を訴えられる制度だ。本書は、日本ではほとんど報道されてこなかったTPPのこうした本質に、私たちの目を向けさせてくれる。
本書が採用するタフツ大学経済モデルの示す試算結果は衝撃的だ。日米両国とも、TPPによってマイナス成長、雇用減、そして労働分配率の低下が生じるというのだ。これは、「TPPは多国籍企業のためであって国民のためにならない」と警告する米国のノ―ベル経済学者スティグリッツ氏の主張とも筋道が合う。TPPは経済好影響どころか、負の影響をもたらすのだ。我々は少なくとも、こうした論点を知悉した上でTPPを論じるべきではないだろうか。」

評者:諸富徹氏(京都大学教授・経済学)
『朝日新聞」(2017年3月12日)


「(前略)内田聖子・アジア太平洋資料センター共同代表は、環太平洋連携協定(TPP)などの自由貿易協定が「力のあるものにとってのルールづくり」になっていると批判。欧米の活動家とのてい談では、秘密交渉の中、米政府の〝アドバイザー〟になって大企業自身が条文を書く実態が明らかにされます。マレーシア出身の経済学者、ジョモ・K・スンダラムは、TPPの「経済効果」宣伝にも使われたモデル計算のうそを暴きます。
問われるべきは「自由貿易か保護貿易か」ではありません。技術革新の恩恵を活用して環境破壊や貧困など現代世界の問題解決に貢献し、どの国・地域も落ちこぼさない貿易協定を、と呼びかけます。」

『赤旗」(2017年2月19日)書評より


「朝日新聞」(17年3月12日)、「赤旗」(17年2月19日)、「日本農業新聞」(17年4月16日)、「信濃毎日新聞」(17年4月23日)、「宮崎日日新聞」(17年4月30日)、「女のしんぶん」(17年4月10日)、「ふぇみん」(17年4月15日)、「町村週報」(17年4月10日号)、「民医連医療」(17年5月号)、「女性のひろば」(17年6月号)、「消費者リポート」(17年6月22日)、「出版ニュース」(17年5月中旬号)、「時局」(17年6月号)、新聞「農民」(17年4月10日)、「全国町村会」(17年3月9日)などで紹介されました。