居酒屋おやじがタイで平和を考える

松尾康範
四六判/192ページ/本体1600円+税
2018年7月/ISBN978-86187-153-5 C0030


国際協力NGOのメンバーとしてタイで活動したのち、
ホンモノの酒と食べ物を提供する居酒屋を経営する著者が、30年間の経験と多くの人びとの
交流に基づき軽妙なタッチで描く、地べたからの平和論。身土不二の世界が平和を創る!

 

目次


はじめに


第1章 タイとの出会い
タイに行く/大国に振り回される南の国々/タイは日本の台所/豊かなイサーンの変容/ところでNGOとNPOって?/仲間たちとの旅が始まる/都市の膨張/相次ぐ大規模開発/イサーンの大地を走る


第2章 日本の農業が歩んできた道のり
アジア農民交流センターとの出会い/追い詰められた日本の農/敗戦後の日本を振り返る /高度経済成長の陰で/下がり続ける米価/身土不二・市民皆農・百姓/日本の都会の変容


第3章 闘う農民バムルン・カヨター
メコン河を渡って来た人びと/やんちゃな子ども時代/「血の水曜日」そして村へ/複合農業/農民の団結/世界の農民たちとの出会い/防弾チョッキを身に着けて/本来の豊かさを取り戻す貧民連合/SHINDOFUJI


第4章 希望を紡ぐ日本の仲間たち
越境する水牛/天高く飛び立つ鳥/WE21ジャパン/スポーツに熱狂する陰で/地球的課題の実験村/地域のタスキ渡し/置賜百姓交流会/養鶏との出会い/レインボープラン/純米酒・甦る/ホピの言い伝え


第5章 むらとまちを結ぶ市場
おすそわけ/行き着くところまで来た日本社会のオルタナティブ/地場の市場づくりのアクションリサーチ/小さな村の朝市から/むらとまちを結ぶ市場の誕生/NGOの役割/時代が求めていた/時代の過渡期は創造期/優しさのおすそわけ/百年の森構想


第6章 お酒から考える自由と平和
焼酎蔵巡りの旅/一滴の会/〝旨い〟の先にある〝幸せ〟/しっかりとした日本酒は超熱燗で!/日本酒のサイズ?/ドブロク文化を取り戻す/農民支援策が主体性を奪う/生産する自由を取り戻す


第7章 食をみつめる
食の変容/食の貧困化と格差の進行/食卓の向こう側/食の乱れは心の乱れ/安くてヘルシーなバナナの裏側/バナナの民衆交易/太郎君の悲劇/大自然の生命力とつながる食生活一七項目/意識して食する時代/お弁当の日/一人の百歩ではなく、百人の半歩/快医学で身体を改善


第8章 越 境
心情の分かち合いの交流/生きるための歌/地下水の流れ/地産地消は平和の象徴/主体性を取り戻すためのネットワーク/越境してもうひとつのグローバリゼーションを創ろう


おわりに

 

著者プロフィール

松尾康範
1969年生まれ。1994年~2004年に日本国際ボランティアセンター(JVC)スタッフとしてタイに滞在。その間、JVCタイ現地代表を務める。現在は、神奈川県横須賀市で居酒屋『百年の杜』を経営する傍ら、アジア農民交流センター事務局長、成城大学非常勤講師。 著書に『イサーンの百姓たち――NGO東北タイ活動記』(めこん、2004年)、共著多数。

 

書評

 

書評オープン

 現在はホンモノの食べものと酒を提供する居酒屋を経営している著者は、30年前からタイと関わってきた。そのきっかけはNGOメンバーとしてイサーンに一年間ボランティア長期滞在したこと。イサーンはタイで最も貧しい地域と言われていたが、そこで著者が出会ったのは、自分たちの食べものを田畑でつくり、家や田んぼの脇に生えた野草を摘み、農閑期には家の建て替えなどを仲間同士で行っていた、「生きる力をもった豊かな人たち」だった。その後、アジア農民交流センターにも参加し、タイ、フィリピン、日本の農民交流に携わり、国境を越えて人と人が結ばれていく豊かさを味わう。食と農と酒とアジアをキーワードに、地べたから境界のない平和を考える。

『ワイワイタイランド』(215号、2018年9月10日)


本書はアジア農民交流センター(AFEC)が17年に実施したタイでの交流の旅をなぞるように、かつて松尾さんがNGO活動してきた軌跡と食卓の向こう側にある農村が、タイの農民の視点から綴られています。タイトルから想起される「国際協力と居酒屋?どう関係があるの?」という疑問も、ロードムービーのような本訴を読み進めていけば「なるほど」と納得。軽妙なタッチの文章からはJVCが長期目標に掲げる「安心して共に生きられる社会」というのは誰かほかの人がつくって提供してくれるものではなく、私たちひとりひとりの手にかかっているということが伝わってきます。そして本を読み終えた頃には、ひとつの旅を終えた感じがして、なんとも心地よい気持ちになります。

JVC会報誌『Trial & Error』(333号、2018秋号)


著者は本当の平和を考えた本だという。自らの30年間の国際協力活動の経験と多くの人々の出会いに基づいて描いた、「地べたからの平和論」である。その結論は「身土不二の世界と国境を超えた深い交流が平和を創る」。昨年秋に著者がコーディネーターになったタイ東北部・イサーン地方を訪ねる旅を縦軸に、著者ならではの視覚で切り取ったタイと日本の現状を横軸に、農と食を中心とする社会のありようを描く。著者は1990年代から2000年代前半に、日本のNGOの草分けともいえる日本国際ボランティアセンターのボランティアスタッフとしてタイに滞在。開発に翻弄される農民の暮らしを良くするため、「むらとまちを結ぶ市場」づくりに奔走した。神奈川県内で居酒屋を経営する著者の、経験を基にした書となっている。

『日本農業新聞』(2018年12月16日)


P-nong Learning Centerのウェブサイトで紹介されました。
『百姓は越境する』(no.35・合併号、2018年8月28日)で紹介されました。
『地球的規模の実験村』(2018年11月号73号)で紹介されました。
『ハリーナ』(2018年11月号41号)で紹介されました。
『いのちの快ネット』(第244号2019年1月1日)で紹介されました。
APLA&ATJ発行『PtoP NEWS』(vol.30 2019年2月号)で紹介されました。